【三橋克仁】「大企業相手でも勝てる」BCG内定を蹴って起業したマナボ三橋氏が語るスタートアップの可能性

2017.04.05

【三橋克仁】「大企業相手でも勝てる」BCG内定を蹴って起業したマナボ三橋氏が語るスタートアップの可能性

就活偏差値でいうと”神レベル”と評されるボストンコンサルティンググループ(以下BCG)の内定を蹴って、「教育×IT(=EdTech)」の会社、株式会社マナボを起業した三橋克仁氏。

経済的に決して裕福とはいえない家庭で育ち、持ち前の行動力と努力で名門・筑波大附属高校、そして東京大学へと進学。BCGといえば東大生ならば誰もが憧れる就職先だが、それを捨てて「自分がやりたいことをやって、社会に価値を提供するために」起業を決意した。

今回は、自らの経験から起業した経験と、自身が感じたスタートアップの可能性についてインタビューした。

BCG内定から起業を決意するまで

まず、株式会社マナボがどのようなサービスを展開しているのか教えてください。

株式会社マナボは、スマホやタブレットを使ったオンライン家庭教師サービス「manabo」を提供しています。スマホアプリを通じて、生徒が分からない問題の写真を投稿し、チューター(講師)にリアルタイムに質問できるサービスです。

チューターのほとんどが有名大学の大学生で、得意科目をアプリの音声通話と手書きの画像共有で教えられるようになっています。これによって離れた場所でも、図などを用いた理系科目の指導が可能になりました。

「教育×IT」分野、すなわちEdTechを用いたサービスですね。では、三橋さんがEdTechに興味を抱くようになった経緯を教えてください。

まず、大学院1年生になった4月1日、休学届を出しました。

というのも、大学院進学直前のタイミングで、教育とITのクロスドメインでビジネスをやっているITベンチャーからインターンの誘いがあったからです。企画、開発、サービス解析、営業など一通りの経験を通して、「EdTechはこれから市場がどんどん大きくなっていく」と感じ、自分自身もモチベーションを持って取り組める領域であると実感しました。特に、自分自身貧困のバックグラウンドもあり、学ぶ機会を努力で掴んでここまで頑張ってきた経験もあるので、この領域自体にとても興味を感じ、事業をやりたいと思いました。

しかし、ビジネスをやったことがない・経験もない・知見もない・力もない・人脈もない―本当に何もない状態から起業することに対して恐怖感を持っていました。その恐怖感がなかったらすぐにでも始められたと思うのですが、会社に勤めて経験を積んで力を蓄えてから、満を持して起業―というイメージを持っていました。

外資系戦略コンサルティングファームとして有名なBCGから内定をもらったということですが、なぜBCGを受けたのですか?

先程述べた大学院1年生のときのインターンの経験もあり、将来自分で起業したいという思いがあったので、短期間のうちに色々な会社の内情を知ることができる外コンの環境が最適であると考えていました。

最終的にはBCGを蹴って起業する道を選んだきっかけは何でしょうか?

ある時、友人から誘われたビジネスコンテストに出場したら入賞し、シリコンバレーに行かせてもらえる機会がありました。この経験が後にBCGを蹴って起業を決意することに繋がります。

シリコンバレーでは、Google, Facebook, Twitter, スタンフォードなど色々なものを見せてもらいました。そこではスケールの大きさに圧倒されたのを覚えています。例えばGoogleはもはや会社でなくて街。片側6車線ほどの道路が敷地内にあり、その脇には4,000台のフリーで乗れる自転車。

Facebookについては、Macのトラックパッド、マウス、キーボードなどの自販機のようなものが置いてあり、使い捨てできるようになっていました。会社自体が一つの街・文化を形成しているような規模感でした。

自分が事業を起こして同じような規模感の会社を作るのは厳しいかもしれない…と思っている中、Evernoteを見に行きました。当時2,000万人ほどのユーザーがおり、東京丸の内のオフィスビルと同程度の大きさのビルの2~3フロアに200人くらいの社員がいました。Twitter, Facebook, Googleなどを見た後でしたので、「この規模感なら自分にもできる」という楽観的な気持ちになりました。

また、カリフォルニアの空がとても青いのを見て、「失敗してもまたやればいい」と背中を押されたようにも感じました。

ある種自信のようなものを抱いたのでしょうか?

例えばスタンフォードのコンピューターサイエンスの優秀な人達のうち3~4割はスタートアップ企業に行くか、自分で起業するか、らしいのです。日本だと今でこそ少しずつそのような認知が深まってきましたが、トップofトップ層の人たちは自分でビジネスを起こし、そうでないレイヤーの人たちがインベストバンカー(投資銀行)を目指すイメージです。それを現地に行って肌で体感できたのはとても大きかったです。

それに加えて、私生活で結婚しようと思っていた彼女と別れたのも大きい要因でした。もしも結婚していたらもう少し冷静になって安定な道を選んでいたとは思います。

就職ではなく起業を選んだことについて、家族の反対などはありましたか?

家族は相談ゼロでした。高校2年生くらいの時から、経済的にも意思決定的にも独立できていましたので。基本的には伝えるべきことは伝えるけれども、100%自分で決めてから事後報告。大学院を休学してITベンチャーのインターンに行ったときも色々言われましたが全部無視。「俺がやるって言ってるんだからやるんだ」と。起業のときも事後報告でした。

「大企業相手でも十分勝てる」そう感じた5年間

起業してからこれまで大変だったことは何でしょうか?

 お金周り、資金繰りです。例えば数億円の資金調達をしようとしていて、何かの問題で3ヶ月後ろにずれてしまったとき。月2,000万円ずつ支出があるとしたら、単純に6,000万円分をなんとか工面しなければならない。

このようなとき、急遽仕事を作って売上を立てる、不本意ではあるけれども人の首を切る、個人で数千万単位の借り入れをし、リスクを背負って会社に貸し付ける…このような苦しい判断を迫られたときは過去に2回あります。

苦しい時期を乗り越えて、身についた自信などあれば教えてください。

少なくとも日本国内で見たとき、EdTechを用いて教育をドラスティックに変えていこうという動きは、どれほどの有名な大企業でも全然できていない。自分たちもまだまだできているとは言えませんが、「もっと良いやり方はいくらでもあるのに」と。なので、相対的に見たときの勝ち筋、「できるぞ」という自信は、これまで5年弱やっていく中で感じています。

自分が学生の時は自分の力がどれだけ通用するのか分かりませんでしたが、この数年間で教育系の大手の会社さんと繋がりを持つようになり、会長・社長レイヤーの人たちと話す機会も増えてきました。大企業の幹部の人たちと話をして、彼らの考えている中身が分かるようになってきた今、改めて思うのは、少なくとも「ITをうまく用いて教育を刷新しましょう」ということに関して言えば、うちに分があるということ。

まだ大きな結果は出ていないものの、「勝てる」という感覚はあります。いずれはその領域の第一線になるということを目指せる立場にあると感じています。

EdTech以外の領域でスタートアップやベンチャー企業が大企業を超えられるとお考えでしょうか?

誰も踏み込んでいない領域や、その市場で決まった勝者がいない場合、それはベンチャーやスタートアップにとってはかなり好条件だと思います。

誰が事業をやるにしても、未開拓の領域では、思っている以上に市場ニーズのことを理解できおらず、ニーズに刺さる良いものも作れません。なので、議論を重ねて製品の改良を進めていくしかない。

しかし、大企業の場合、組織構造上仕方ないとはいえ、そのプロセスが驚くほど遅い。スタートアップやベンチャーならば、数時間対面で話して意思決定をするスピード感のところを、大企業では2週間かかることなどしばしばありますし、スタートアップが1週間で考えて決めることを、大企業では3ヶ月かかったりします。

なので、大企業では意思決定が桁違いに遅いし、コストも高い。何かモノを作るのならば、少数精鋭で本当に力のある人がバシバシ進めていくのが一番いいと思っています。そういう意味で、大企業と勝負するならば勝てる、という自信があります。

 

第2回<【三橋克仁】「チャンスしかない」大企業には見えないベンチャー企業のキャリア形成>に続く。

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